トレンド・コラム

2026年のIT資産管理トレンド

著者:イタムス株式会社 代表コンサルタント 武内烈(Oracle License Master / SLAM Master)|最終更新:2026年5月

IT資産管理(ITAM/SAM)は、技術・ベンダー・組織の変化を受けて急速に進化しています。2026年現在、AI活用による自動化の実用化、SaaSの爆発的拡大、Oracle・VMware・IBMによるライセンスモデルの大規模変革、そしてFinOpsとの融合という4つの大きな潮流が交差し、ITAMの役割と重要性はかつてないほど高まっています。本稿では、現場の実務経験に基づき2026年のITAM動向と対応策を整理します。

AI・機械学習によるSAM自動化の現在地

2026年のSAMツール市場においてAI機能は「あれば良い差別化機能」から「標準装備」へと移行しつつあります。ServiceNow・Flexera・Snow Softwareのいずれも、AI/MLを活用したライセンス最適化提案・異常検知・ソフトウェア正規化の自動化機能を強化しています。

特に実用化が進んでいるユースケースはソフトウェア正規化(Normalization)の自動化です。探索ツールが収集するインストール済みソフトウェアの名称は、バージョン・エディション・言語の違いにより数十種類の表記揺れが生じますが、AIによる自然言語処理でこれを自動的に標準ソフトウェアカタログにマッピングする精度が向上しています。

ただし、AIが出力する最適化提案をそのまま採用することには依然として注意が必要です。OracleやIBMのような複雑なライセンスモデルでは、AI判定が見落とすライセンス条件の例外や契約上の特殊条件が多数存在します。AI活用は「人間の専門家が確認すべきポイントを効率よく絞り込む」目的で使うのが現時点での最適解です。AIを信頼しすぎることなく、専門知識との組み合わせで活用することが2026年のベストプラクティスです。

SaaSスプロール問題:管理対象の爆発的拡大

「SaaSスプロール」とは、組織内で把握・管理されていないSaaSアプリケーションが野放図に増殖している状態を指します。IT部門の承認なしに事業部門が導入したSaaS(シャドーSaaS)は、セキュリティリスク・データガバナンスリスク・重複投資の温床となっています。調査によれば、企業が実際に利用しているSaaSアプリケーションのうち、IT部門が把握しているのは全体の60〜70%にとどまると言われています。

SaaS管理の課題はライセンスコストだけではありません。同一機能のSaaSが複数部門で個別契約されている重複コスト、退職・異動後のアカウントが解除されずに費用が発生し続けるゾンビアカウント問題、そして個人情報・機密データがセキュリティ基準を満たさないSaaSに保存されるデータリスクも深刻です。

対応策としては、まずSaaSインベントリの可視化が第一歩です。SSO(シングルサインオン)ログ・クレジットカード請求・ネットワークトラフィック分析などから利用SaaSを横断的に検出します。次に利用状況(アクティブユーザー数・機能利用率)に基づいてライセンスを最適化し、重複SaaSの統廃合を進めます。Okta・BetterCloud・Torii・Ziplaneなど専用SMP(SaaS Management Platform)ツールの活用も有効です。

Oracle・VMware・IBMのライセンス戦略変化と企業への影響

Oracleは引き続きアグレッシブなライセンス戦略を展開しています。2023年のJava SE有料化(月額課金への移行)はJavaを業務システムで広く使う日本企業に大きなインパクトを与えました。2026年現在もOracle DatabaseのクラウドBYOL解釈、Oracle Linux・MySQLの利用条件について継続的な精査が必要です。特にAWSやAzureでのOracle製品利用はLMS監査の重点対象であり、自社のデプロイメント状況の把握が急務です。

VMware(Broadcom)によるサブスクリプション完全移行(2024年)は、オンプレミス仮想化基盤を持つ企業に甚大なコスト増をもたらしました。対応の選択肢は大きく3つです。(1)Broadcomとの交渉によるコスト最小化、(2)Nutanix・Microsoft Hyper-V・Red Hat OpenShiftへのマイグレーション、(3)パブリッククラウドへのワークロード移行。いずれの判断も経営レベルの意思決定が必要であり、2026〜2027年が各社の対応期限として集中しています。

IBMは製品ポートフォリオの整理が続いており、特にIBM Software(旧Passport Advantage)とRed Hat製品の統合に伴うライセンス体系の変化が注目点です。ILMT(IBM License Metric Tool)を適切に運用していない企業では、Sub-Capacity Licensingの適用除外となり全物理コアベースでのライセンス計算を要求されるリスクが継続しています。IBMとの大型契約を保有する企業は、現在のライセンスポジションの再確認を優先的に行うべきです。

FinOpsとITAMの融合:統合的なIT支出管理の潮流

FinOps(Financial Operations)は、クラウド支出を可視化・最適化するためのフレームワークとして急速に普及しています。一方でITAMは、オンプレミスを含む全IT資産とソフトウェアライセンスの管理を担ってきました。2026年現在、この両者の境界が融解しつつあります。

その背景には、IT支出の構造変化があります。クラウド支出・SaaS支出・オンプレミスライセンス支出が複雑に絡み合う現代のIT環境では、それぞれを別々の組織・ツール・プロセスで管理することが非効率であり、全体最適の視点が失われるリスクがあります。FinOpsとITAMを統合した「Technology Business Management(TBM)」の考え方は、IT支出全体をビジネス価値と結びつけて管理するフレームワークとして注目されています。

実務的な対応としては、まずFinOpsチームとSAMチームの定期的な情報共有の場を設けることから始めます。クラウドコスト最適化(Reserved Instance / Savings Plan / Spot活用)とBYOLライセンス活用の組み合わせ最適化は、両者が連携しなければ実現できません。また、IT支出の可視化ダッシュボードをクラウドコスト・SaaS費用・オンプレライセンス費用を横断して統合することで、経営層へのIT投資ROI報告の精度も大幅に向上します。2026年以降のITAM担当者には、クラウドコストへの理解とFinOpsとの協働能力が新たに求められるスキルになっています。

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