多くのソフトウェアのメーカーにとって今日の市場はすでに成熟しきっている(もちろん、コンプライアンス意識が低いという問題を抱える東欧、アジア、アフリカ諸国は除く先進国の話ではあるが)と考えられている。
そのことから、「既存のユーザーからできるだけ売上をあげる」のは、ソフトウェア・メーカーの常識となっている。
さらに、複雑化するIT環境においては、ライセンスのTerms & Conditions 、つまりライセンス契約の利用規約を常に正確に把握し、コンプライアンスに遵守するというユーザーの義務を遂行することは、必要ではあることは理解していても、非常に困難であることも知られている。
そこで、多くのソフトウェア・メーカーの営業姿勢は、「包括契約の方が、安全ですよ。なんでも利用できるし、安心できて、お得です。」と、非常に高価な契約を勧める。
欧米でもこんな状況で、実際は既に利用していないライセンスを数多く保有していたり、利用価値のない製品のライセンス料を支払っている企業は少なくない。
ここ数年、これらの複雑なソフトウェア・ライセンスの管理や最適化のソリューションがSLO(Software License Optimization)として注目され、複雑なライセンスの利用規約にもとづくメトリクスの管理が可能となり、実際の使用状況が明確に把握できることになったことから、ユーザーは、これらの情報やIT戦略、ソフトウェアの今後の利用、運用戦略情報などを用いて、ソフトウェア・メーカーとの「ライセンス契約の最適化」に動いている。
ソフトウェア・メーカーとしても、実情に合わない製品を無理に押し付けるよりも、今後の「サービス化」の流れが強まる中、ユーザーとの良好なパートナーシップを求む機運も高まり、適切で正確な情報を基にしたユーザーの交渉を受け入れざるを得ない状況になっている。
つまり、強気な SAP のライセンス契約であっても、他のソフトウェア・メーカーの契約同様、「契約は交渉可能」なのである。
これはできません、あれもできません、は交渉の結果として結ぶ「契約」ごとにはあり得ない。
欧米では、アメンドや、必要であれば、製品利用やIT戦略のロードマップを基に、既存の契約を終了し、単年度の最適化された契約へ移行するという企業も増加している。
まずは、現状を明確に把握し、戦略、ロードマップに基づいた「あるべき姿」と現状のギャップを識別し、その情報を基に、戦略的な交渉により、契約の最適化が実現可能であるということを欧米の事例から理解することができる。
ちなみに、欧米のリサーチ会社やメディアでは、この議論が数年前からかなり話題になり、いろいろなヒントや、ホワイトペーパーなども発行されている。