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契約は交渉力の無さがコストを100倍にする

契約は交渉力の無さがコストを100倍にする

ソフトウェアライセンス契約およびサブスクリプション契約は、ビジネスニーズに基づいて使用許諾条件を交渉した結果を運用環境において、その契約した使用許諾条件に照らし合わせて管理するからコンプライアンスの管理が可能となる。
何を持ってコンプライアンスとするのかは、ソフトウェアベンダーの担当営業が理解できていないことが多いということを理解した上でコンプライアンスを把握し、コントロールするための管理設計が必要となる。
契約交渉は交渉プロセスを設計し、ビジネスニーズに基づいた諸条件の獲得を目標として交渉チームが交渉する。

以下に代表的な重要ポイントをあげる。

① ビジネスニーズに基づいて使用許諾条件を交渉するためにビジネスニーズを正確に把握する
使用許諾先組織のスコープ
システム要件を満たす使用許諾条件の把握
④ ディスカウントレートの適用範囲
年次上昇率の交渉
⑥ 契約条件はすべて交渉が可能であると理解する。問題は自社に交渉力があるかどうかを見定めること
⑦ ベンダーが提示する「すべてのお客様にこの条件でやってもらっています」という言葉を鵜呑みにしないこと

ビジネスニーズに基づいた使用許諾条件が獲得できていない場合、後に高額な追加費用を求められる状況に陥ることが多い

使用許諾先組織の定義ひとつとっても、ビジネスニーズに基づいて、誰が、どのタイミングで使用権を必要としているのかを想定し、想定されるロードマップに則って最終形の組織スコープを最初に交渉して獲得することで多額の追加コストを回避することが可能だ。また、どのような実装環境での運用が考えられるのかも物理、仮想、クラウドなどの利用環境形態のロードマップなどを検討し、これらの可能性に対して備えた使用許諾条件を獲得しておくことも後の高額な追加請求を回避することを可能とする。
物価上昇率を考慮した年次上昇率は、基本的には標準的なインフレを考慮した物価上昇率をベースに交渉するべきで、それ以上の上昇率は実質的な値上げを含んでいることを理解し交渉するべきであり、ベンダーの提示をそのまま受け入れる必要はない。
契約は、”Agreement” の名の通り、双方の合意形成を意味している。提示された条件はあくまでベンダー優位な提示であり、すべての条件は交渉が可能であると理解し、交渉力を上げるためのボリューム、その他の総合的なパワーバランスの調整(BATNAの戦略)により交渉力を獲得して交渉することが大前提であると理解し、交渉チームが交渉プロセスをコントロールすることが重要だ。

ベンダーの監査戦略

契約交渉が管理されていない、コンプライアンスのガバナンス、コントロールが無い組織は特にベンダーの監査戦略に注意する必要がある。これはコストを急激に上昇させる大きな要因となる。「包括契約」という聞こえの良い選択肢は、多額の一時金と継続的な多額の保守費用を余儀なくされる。また、顧客のための最適化支援と称するサービスなども実際にはサービス費用を前払いで支払う監査サービスにほかならない。これらの無駄なコストを回避するためには、ユーザーがプロアクティブに契約をコントロールする必要がある。

ソフトウェアライセンス契約もクラウドサブスクリプション契約も全ては、「ビジネス契約」であることから、企業のガバナンス、コントロールの一環としてコンプライアンスを正確に把握し、最適化のための契約交渉が継続的に実施できるようなポリシー、体制(役割と責任)、業務プロセスが求められる。これはツールを導入すればどうにかなるという話ではないことを経営がしっかりと理解し、「とりあえずツールで運用チームがどうにかせよ」という悪しき習慣から脱却することが最も重要である。

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