ソフトウェアベンダーによるライセンス監査は、以下のような様々な形態で実施されてきました。
① ソフトウェアベンダーの監査部門または指定監査法人によるハードアプローチ
② ソフトウェアベンダーのアドバイザー部門(監査部門のブランチ)によるソフトアプローチ
③ ソフトウェアベンダーの営業によるソフトアプローチ
④ ソフトウェアベンダーのパートナー(販売代理店)によるソフトアプローチ
⑤ ソフトウェアベンダーのライセンス最適化/最適化管理認定パートナーによるソフトアプローチ
これらがすべてではありませんが、今後も「監査」は、ハードアプローチ、ソフトアプローチで実施されると考えられます。
ハードアプローチが「監査」という明確な著作権者、知的財産権者の権利の行使であることをうたったアプローチである一方で、ソフトアプローチは、「ライセンスの棚卸しのサポート」、「ライセンス最適化の支援プログラム」、「ライセンスサーベイ」など「監査」をうたわないアプローチとなっています。そして、これらの「提案」は、やんわりとお断りすることができるのです。
アプローチがソフトであろうとなかろうと、実際には「監査部門」が関与することが多く、情報はソフトウェアベンダーの売り上げ増の目的で利用されることが多いのが事実です。
このようなソフトアプローチは、常に存在し、「監査」であるとは知らないうちに「監査データ」を提供しているユーザーは少なくありません。
なぜ、お断りできるソフトアプローチの監査に応じてしまうのか?(そもそも監査という認識がないケースも多々ありますが)
その原因は、自組織による「自己監査能力の不足」にほかなりません。
結果として、「無償でライセンス最適化のアドバイスをしてくれるので、ライセンス棚卸しをしてもらおう」ということになりやすいのです。あるいは、「サーベイ調査にはすべてのユーザーさまにご回答いただいています」などの説明から、情報提供は義務であると誤解される場合もあるでしょう。この「無償でライセンス最適化のアドバイス」を提供してライセンスコストを削減してくれるサービスが成立するのか?と考えると、サービス提供の結果として追加のライセンス販売など売り上げがなければ、このような活動を営利目的で活動している組織が実施するはずがないということに気が付くと思います。もちろん中にはベンダーからパートナーへの補助金が提供されている場合もありますが。
しかし、それでも、ついユーザーがソフトアプローチに応じてしまうのには、ライセンス契約やライセンス使用許諾条件を理解している人がユーザーの社内にいない、という台所事情から、常にライセンスについての不安がある、というユーザーの心理があります。
そして、それを誰よりも知っているベンダーは、そのようなユーザー心理を狙ってソフトアプローチをしてくるのです。
「ただより高いものはない」は、真理ですし、「販売している人を100%信じてはいけない」も真理です。
お断りできることは、やんわりと、しかし、しっかりとお断りする。そして、自らの力でライセンスの状態を把握し、コントロールすることが、「監査を受け身で受けてコスト増大を甘んじて受け入れる」という状態を回避する唯一の方法です。
購入者としては、自らの力でライセンス契約を理解し、交渉し、組織のニーズにマッチしたライセンス契約を獲得し、契約で定義された使用許諾条件に基づいて運用し、継続的に交渉して改善する、を怠ってはいけません。
リセッションがやってきたとした場合は、10年サイクルで考えると、これから数年間は様々な形でのソフトウェアベンダーのソフトアプローチおよびハードアプローチの監査が実施されると考えられます。今こそ、その対策と「自己監査」の準備に取り掛かることをお勧めします。
ベンダーマネージャの社内育成とアウトソーシング
グローバル市場では、特定のベンダーに特化したベンダーマネージャのアウトソーシングサービスやコンサルテーションなどが多数存在しています。特にOracle社の契約は複雑で、専門的知識が要求されますので、この分野の専門コンサルティング会社の増加が顕著です。しかし、サービスの品質はまちまちですので注意も必要です。