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Oracle ライセンス監査の交渉に備える

2019年 OMA(Oracle Master Agreement)の変更
Oracle 製品 のライセンス契約の条件は、OMA や Ordering Document といわれている発注情報で定義されていますが、2019年のOMA には監査項目において「Oracle社が提供するLMSスクリプトを使用してデータを提供すること」と条件が追加されています。今までもLMSという監査チームが提供するLMSスクリプトを使用して「インベントリ情報を提供してください」という依頼はあったものの、OMA には明確に定義されていなかったので、任意で協力するというものでした。

しかし、2019年のOMA にはLMSスクリプトを使用したデータ提供が義務付けられる条件が記載されるので、この条件を交渉して削除しない限り、ユーザーはLMSスクリプトを使用してデータを提供し、その他の情報も要求に応じて提供しなければならなくなります。

LMSスクリプトとは?
Oracle社にはLMS(License Management Service)という監査チームがあります。このチームが監査の際に使用するデータコレクションツールに「LMSスクリプト」というOracle社の製品情報を取得するためのスクリプト群があります。これらのツールを使用することで、インストールされたOracle製品のバージョン、エディション、使用しているオプションなどの設定情報が収集されます。

これらのツールで収集された情報と、ヒアリングなどをもとにユーザー環境で運用されているOracle製品のライセンス消費状態を把握して、コンプライアンスの状態を把握し、不足するライセンスについて監査レポートを提供する活動をしているのがLMSというチームです。

LMSレポートは正確か?
Oracle社はVMWare などのSoft-partitioning 技術を、ライセンス消費を決定する技術として認めていません。つまり、VMWare などの環境では、Oracleライセンスの消費は環境にあるすべてのプロセッサを対象にパーペチュアルライセンス[永久ライセンス]が要求される可能性があります。そしてLMSレポートは、そのような環境においてのライセンス消費の最大値が調査結果として報告される可能性が高いということです。

これに対してユーザーは、実際の保有ライセンスを契約のたな卸し・Ordering Document のたな卸し・実装環境の整理などの情報をもとに、自社環境とOracleライセンスの運用状態・Oracleライセンスの稼働によるメリットなどを考慮して、請求される監査ライセンスや提案を検討して交渉し、妥当と考えられる条件や金額で折り合いをつける努力をしなければなりません。

交渉のステップ
自社のOracleライセンス契約およびOrdering Documentすべてをたな卸しし、レビューする。
LMSスクリプトと同等レベルのたな卸し情報を用いてたな卸しする。または、すでにLMSスクリプトによるLMSのたな卸しが進行している場合は、結果データのレビューを自社で実施する。
LMSによるライセンスポジションのレポート報告と自社の見解の差分を把握し、交渉に備える。
Oracleベンダーマネージャまたは外部の専門家と相談し、LMSスクリプトデータのレビューおよび交渉戦略を検討する。
戦略とデータ、仮想環境における制御計画をもとにLMSチームとLMSレポートを最終化するための交渉を実施する。

ベンダーマネージャの社内育成とアウトソーシング
グローバル市場では、特定のベンダーに特化したベンダーマネージャのアウトソーシングサービスやコンサルテーションなどが多数存在しています。特にOracle社の契約は複雑で、専門的知識が要求されますので、この分野の専門コンサルティング会社の増加が顕著です。しかし、サービスの品質はまちまちですので注意も必要です。

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